• 2026/11/3 05:44

メキシコGPレビュー

ついに正式にアントネッリの史上最年少チャンピオンが確定した。当サイトでは、中東二戦の中止を事実上の確定事項として扱っているため、前戦アメリカGPが実質的なタイトル決定の瞬間であったが、これで例え中東二戦が行われようとも2位のフェルスタッペンには逆転不可能となり、公式にタイトル獲得が決まった形だ。

今回もデータを交えながらレースを振り返っていこう。

1. 絶対王者の完璧なレース

今回のレースの主役は、何といってもフェルスタッペンだろう。ミディアムタイヤでスタートし、1周目をルクレールの後ろの2位で帰ってくると、5秒ペナルティを抱えたルクレールがピットストップを行うのと同じタイミングでピットに入り、見事に逆転した。その後はソフトタイヤでのロングスティントであったが、巧みにタイヤを管理し、赤旗やセーフティカー時のリスタートでも完全に場を支配した。

図1にフェルスタッペンとルクレールの27周目までのペースグラフとギャップグラフを示す。

図1-1 フェルスタッペンとルクレールのペースグラフ
図1-2 フェルスタッペンとルクレールのギャップグラフ

ルクレールのソフトタイヤよりも、フェルスタッペンのミディアムタイヤの方がデグラデーションが小さく、24周目までに5.1秒まで広がったギャップが、最後には4.5秒まで縮まっている。

フェルスタッペンがこのギャップで食らいついたことで、5秒ペナルティを抱えるルクレールにとっては万事休すとなった。27周目、ルクレールがピットに入ると、フェルスタッペンも追従。5秒ペナルティの消化時にはある程度マージンを持つのが通常であるため、ピットストップは通常8.0秒以上かかる。よって4.5秒後方のフェルスタッペンにとっては、静止時間が3.5秒以下であれば前に出られる。レッドブルがこの機を逃すはずもなく、ここでフェルスタッペンが首位に躍り出た。

ここからは、ルクレールの1.5秒前方でペースをコントロールし、ライバルにダーティエアを浴びせつつタイヤを温存。赤旗がなかった場合のソフトタイヤでの44周スティントにも、おそらく不安はなかっただろう。そして赤旗やセーフティカーのリスタートにも何の危なげもなく、まさに最強ドライバーの称号に相応しい勝利であった。

フェルスタッペンにとっては、ここ4戦で3勝。一気にランキング2位に躍り出た。レースペースで言えば、開幕戦ではトップから0.9秒、上海では1.5秒、鈴鹿では1.0秒だったところから、ここまで来るとは、レッドブルの底力には脱帽だ。そして同時に「あと少し早くこれを出せていたら」と考えると、アントネッリとの火花散るタイトル争いが見られたに違いない。それは是非来年のお楽しみとしておこう。

2. 強かな王者

今回もアントネッリの異様なまでの強かさが光った。

図2にフェルスタッペン、アントネッリ、ラッセルのレースペースを示す。

図2 フェルスタッペン、アントネッリ、ラッセルのレースペース

アントネッリは、第1スティントではハミルトンの後方で2秒強の差をキープした。ここは、高地で空気が薄いため冷却が厳しい。よって抜けないならば、この程度のギャップでタイヤを労るのが得策だ。そして29周目から前が開けるとペースアップ。その後もデグラデーションが小さく、流石にスティント終盤に軽いドロップオフが見られるが、図1でルクレールが20周目付近からタイムが落ち始めたのと比較すると、極めて優れたタイヤマネジメントと言える。
これはラッセルと比較しても明白で、ラッセルはアントネッリと同じタイミングで自由にプッシュできるようになっても、それまでとペースが殆ど変わっていない。つまり、ハミルトンのペースについて行くのが精一杯だったラッセルと、余裕でついていけたが故にタイヤを労ることができたアントネッリという構図で、大きな差がついている。

そして赤旗後のリスタートを手堅く決めると、48周目のターン1へのブレーキングでルクレールのイン側に飛び込んでオーバーテイクを成功させた。後にノリスが最後までルクレールを抜ききれなかったように、現在のパワーユニットでは、このサーキットでの追い抜きは極めて難しい。その中でこの動きを決めたことで、アントネッリは史上最年少チャンピオンの公式確定を、表彰台で祝う権利を手に入れた。

表彰台をシェアしたのは、フェルスタッペンとハミルトン。3人で12回のチャンピオンだ。フェルスタッペンとハミルトンは言わずもがな、かつて極めて激しいタイトル争いを演じた究極のライバルであり、ハミルトンとアントネッリはメルセデスの先輩と後継者、アントネッリとフェルスタッペンは親友という、それぞれにそれぞれの深い関係とコンテキストがある、味わい深い顔ぶれであった。

さて、シンガポールなどを見ていても顕著だが、アントネッリのレースぶりは、非常に強かだ。無理なリスクは冒さずに、安定して最大限のリザルトを持ち帰る。かつてアロンソがシューマッハの手強さを語る時「車が悪い時でも2位にいる」としていたように、そしてアロンソ自身がそれに最も長けたドライバーの一人でもあるように、アントネッリにはそのような性質が既に備わっている。

また、予選で後ろになっても、第1スティントを誰かの後ろでタイヤを労わりながら進め、前が開けたら一気にペースアップするという展開が多い。鈴鹿、シルバーストーン、ハンガリーなどが代表的な例で、オーストリアでも最後は優勝争いの真後ろまで来た。バルセロナもそれに近い。この展開を実行できるのは大きな強みであり、来年以降、接近した戦いが続く中で武器になるだろう。

さらに今回ルクレールを抜き去った時のような、ブレーキング勝負でのオーバーテイクも得意としており、昨年のシンガポールでもルクレールがその毒牙に掛かっていた。

かつては弱点であった1周目も既に克服し、トラックリミット癖もここ2戦は鳴りをひそめており、こちらも完全に克服したのだとしたら、文字通りのモンスターということになる。来季以降のフェルスタッペンやアロンソ、ハミルトン、ノリスらとの熾烈なタイトル争いがますます楽しみだ。

3. 次戦への展望

次戦は伝統のインテルラゴス。長い全開区間と曲がりくねったインフィールドという相反する二つの顔を併せ持つドライバーズサーキットだ。2020年7月、オランダ紙『De Volkskrant』のインタビューで、フェルスタッペンが「既存のF1サーキットの好きな区間を組み合わせて、理想のコースを作る」という企画に参加した際、彼はインテルラゴスのターン6からホームストレートまでをゴッソリと入れており、非常に気に入っていることが分かる。実際、各コーナーが起伏に富んでおり、かなりドライバーの力が問われるのは間違いない。

通常、ここは抜きやすいサーキットであるが、今年のレギュレーションでは、インフィールドで充電、ターン12からの立ち上がりで全放出と、全車最適解が一致してしまうため、かなり追い抜きは難しいと予想される。

オーバーテイクモードでは290km/h以上でより多くのエネルギーをデプロイできる上に、1周の回生上限に0.5MJが加えられる。だが、SoCのデルタは4.0MJであることに変わりはなく、ターン12を迎える時点でフル充電されていれば、そこから先で全放出するならば、オーバーテイク使用車は、ストレートの前半では確かにアドバンテージがあるが、ストレート後半では寧ろ、前の車より早くバッテリーが切れてしまうことになる。よって、アゼルバイジャンやメキシコ、そしてインテルラゴスのような

・極めて長いストレート
・その前に十分に充電できること

という条件が揃うと、意外と差を生み出しづらく、抜きにくい。

それでも、敢えて電力を残し、ターン4までの短いストレートで仕掛けるという手はあるのかもしれない。この「2本のストレートの連続」という要素が、バトルにどんな効果をもたらすかは、興味深い。とはいえ、アゼルバイジャンのホームストレートとターン3までのストレートでヨーヨーが起きづらかったことを鑑みれば、楽観視はしない方が良いかもしれない。

いずれにせよ、伝統あるオールドサーキットでの一戦には大いに注目だ。


インタラクティブグラフ

ご自身の視点でさらにデータを深掘りしたい方向けに、操作可能なグラフを用意した。

このツールでは、**「ペースグラフ」と「ギャップグラフ」**の二種類が利用でき、ボタン操作で見たいドライバーだけを自由に選んで表示できる。

特にラップタイムグラフには、レース状況を理解しやすくするための工夫が施されている。

  • 塗りつぶしの点:前が空いている状態(クリアエア)でのラップを示す。
  • 白抜きの点:前のマシンの影響下(ダーティエア:前方2秒以内)にあるラップを示す。

この色分けによって、各ドライバーがどのような状況でそのタイムを記録したのかが一目で把握できる。

また、グラフ右上のボタンからは、画像のダウンロードやグラフの拡大・縮小(ズーム)も可能だ。分析の補助として、ぜひご活用いただきたい。

データを読み込んでいます…

Takumi, ピトゥナ