2026年アメリカGPにおいて、各ドライバーが同じタイヤ、同じスティント距離で走った場合、そのレースペースはどのような序列になったのか。
全22台のラップタイムをもとに、フューエルエフェクト、タイヤコンパウンド、タイヤ年齢、デグラデーション、トラフィック、バトル、車両トラブル、ペースマネジメントを考慮し、実質的なレースペースを推定した。
レースペース分析結果
今回の評価条件は、次の3種類の仮想スティントを均等に重み付けしたものだ。
| タイヤ | 想定スティント距離 | 評価比率 |
|---|---|---|
| C4 ソフト | 20周 | 33.3% |
| C3 ミディアム | 24周 | 33.3% |
| C2 ハード | 35周 | 33.3% |
各条件について、その距離を持続可能なペースで走った場合の競争力を推定し、総合評価している。
結果はアントネッリを基準の0.0秒/周とした相対タイム差で、数値が小さいほど速い。
総合レースペースランキング
| ドライバー | ペース差 | 信頼度 |
|---|---|---|
| アントネッリ | 0.0 | A |
| ルクレール | +0.1 | B |
| フェルスタッペン | +0.1 | B |
| ハミルトン | +0.2 | B |
| ノリス | +0.2 | C |
| ハジャー | +0.4 | C |
| ラッセル | +0.8 | B |
| ピアストリ | +0.9 | B |
| ローソン | +1.3 | A |
| ヒュルケンベルグ | +1.4 | B |
| リンドブラッド | +1.6 | B |
| ボルトレート | +1.7 | B |
| オコン | +1.8 | C |
| ストロール | +2.0 | C |
| サインツ | +2.5 | C |
| ペレス | +3.1 | B |
| ボッタス | +3.3 | B |

定量評価から除外したドライバー
| ドライバー | 除外理由 |
|---|---|
| アロンソ | 序盤の接触による車体・フロア損傷 |
| アルボン | 序盤の車体損傷、後半のブルーフラッグなど |
| ガスリー | ベアマンとの接触による大きなフロア損傷 |
| コラピント | 接触によるフロア・サイドポッド損傷 |
| ベアマン | 序盤の接触で大きなダメージを負った |
これらのドライバーについては、レース中に観測されたラップタイムが正常な車両性能を十分に代表していると判断できないため、総合ランキングから除外した。
分析の基本的な考え方
3種類のタイヤを、それぞれ独立に評価する
今回のアメリカGPでは、3種類すべてのタイヤがレースの重要な局面で使用された。
ソフトはフェルスタッペン、ハジャー、フェラーリ勢などが使用し、20周前後のスティントを多く観測できる。ミディアムはアントネッリ、ルクレール、ハミルトン、リンドブラッドなどが20周超の走行を行っている。そしてハードはアントネッリやマクラーレン勢を筆頭に、30周以上のロングスティントが複数存在する。
そこで、それぞれのタイヤについて実際のデータから比較的妥当な基準距離を設定した。
各タイヤの評価比率は1:1:1とし、特定の戦略に有利な評価にならないようにしている。
ただし、3種類のタイヤを実際にすべて使用したドライバーは限られる。
たとえばアントネッリはソフトを使用しておらず、ノリスはミディアムとハードのみ、ハジャーはソフトとハードのみを使用した。
その場合には、良質なスティントから得られる競争力を中心に、他車との直接比較やコンパウンド特性を利用して総合値を推定した。
実測データが存在しないタイヤについては、不確実性が大きくなる。その影響は最終結果の信頼度と推定範囲に反映している。
フューエルエフェクトは0.048秒/周
燃料搭載量の減少によるラップタイム改善を、1周あたり0.048秒として補正した。
第28周を基準とする場合、補正ラップタイムは次の式で表される。
補正タイム = 実測ラップタイム + 0.048 ×(レース周回数 − 28)
これによって、異なる周回に走行したラップタイム同士をある程度比較できる。
ただし最も重視したのは、同一周回での直接比較だ。
同一周回ならば燃料搭載量、路面状態、気温などの多くの条件が共通する。異なる周回の平均値に頼る場合と比べて、路面コンディションの変化を推定する必要が小さくなる。
タイヤのデグラデーションは各スティントで推定する
タイヤのデグラデーションには、車両性能、ドライビング、コンパウンド、スティント前半のペース配分などが影響する。
今回の分析では、正常走行と判断できるラップについて、タイヤ年齢と燃料補正ラップタイムの関係を確認した。
基本的には外れ値の影響を抑えたロバスト回帰を使用し、必要に応じてスティント前半と後半を分けている。
特に重要なのが、長いスティントへ換算する場合だ。
20周で非常に速いラップタイムを記録したドライバーが、35周でも同じペースを維持できるとは限らない。
序盤にタイヤを積極的に使えば、その後のデグラデーションが増える場合がある。逆に序盤を抑えれば、後半まで安定したペースを維持できる可能性が高まる。
したがって、基準スティントに換算する際には、スティント全体で達成可能な平均ペースを評価した。
同じ瞬間的な速さでも、それを何周持続できるかによって評価は変わる。
トラフィックとペースマネジメントの扱い
ラップタイムの積算から各ドライバー間のギャップ推移を再構成し、前車との距離や、その差が拡大・縮小している状況を確認した。
基本的には、前車とのギャップが1秒以内で長く推移する区間はダーティエアの影響を慎重に評価する。
ただし、1秒という数字だけで機械的に判断することは適切ではない。
前車に追いついた後、繰り返しオーバーテイクを試みてタイヤを傷めたケースでは、その後のタイム低下も通常のデグラデーションと区別する必要がある。
一方、前車との間隔を保ちながらタイヤを温存し、前車がいなくなった後にペースを上げる場合もある。
このような走りでは、前半の温存と後半のペースアップを一体のスティント戦略として評価した。
本分析では、このように前半のペース管理が後半のクリアエアでの速さにつながり、スティント全体として実力を発揮できたと判断されるケースを「オープンエンド・クリアエア(OEC)」として扱っている。
また、独走状態となったドライバーの終盤にはペースマネジメントが含まれる可能性があるため、先行車が記録したラップタイムを、そのまま限界ペースと考えることにも注意した。
除外したラップ
スタート直後の第1周、序盤のVSCの影響を受けた第2周、ピットイン・アウトラップ、終盤のVSCに影響された第51~53周などは、通常のペース比較から原則として除外した。
さらに、バトル、周回遅れ、ブルーフラッグ、ミス、バッテリーの充放電によって極端なラップタイムが出たと考えられる周回は個別に確認した。
異常に速いラップについても、前車のスリップストリームやエネルギーの使用状況によって一時的な速さが生じた可能性を考慮している。
ラップタイムだけでは、1周内のすべてのオーバーテイクやエネルギー使用を特定できない。そのため、不自然なラップの前後関係、ギャップ推移、レース展開を照合して採否を判断した。
管理人のポイント
今回は、アントネッリとラッセル、そしてノリスとピアストリのように、チームメイト間で差がつきやすかった。その中で、通常予選よりもレースで大差をつけられてしまうハジャーが、フェルスタッペンと0.3秒差というペースを実現したのは、印象的であった。
また、アロンソはダメージを負った車でヒュルケンベルグと互角のスピードを見せており、今回のアストンマーティンには少なくとも中団最上位、場合によってはピアストリにプレッシャーをかけることもできたかもしれないほど競争力があった。
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