• 2026/10/31 22:25

アメリカGPレビュー

アメリカGPの舞台COTA(Circuit of the Americas)。急な上り坂から進入するターン1、シルバーストーンを彷彿とさせるチャレンジングな高速S字、ロングストレートと複合コーナー群、トルコのターン8のような高速ロングコーナーなど、非常にチャレンジングなサーキットだ。

今回もデータを交えながらこのレースを、そしてアントネッリの初戴冠までの道のりを振り返ってみよう。

図1 コース図

1. 前提となるスケジュール

まず前提として、中東2戦は開催されず、イモラでの代替開催になるだろうという点は押さえておきたい。

常識的に考えて、現在の情勢で中東に向かうことはあり得ない。特に自動車メーカーが従業員を危険な地域に送ることに対して首を縦に振るとは考えにくい。

その中で関係者からFOMに対する批判の声が殆ど聞こえてこないのは何故か?

それは開催権料をめぐる争いを考慮すると自然な答えが見えてくる。イベントがキャンセルとなった場合、F1側と開催者側で金銭面での負担をどちらが負うべきかという問題になってくるのだ。そしてこの時、中止を決めた側が負担することになるはずだ。よって、開催者側が折れるまでF1としては開催する「フリ」をしなければならない、というチキンレースが発生している。

おそらくF1としてはイモラでの開催を決定しており、チームやメーカーのトップマネジメントにはその旨を共有してあるのだろう。おそらくドライバー全員には共有していないのだろうが、「ドメニカリと頻繁に話をする」というフェルスタッペンは、彼らを信頼している旨を口にした。一方、サインツは中東での開催に疑問を唱えたが、その数時間後にはウィリアムズからサインツ本人名義で、F1とFIAの判断を全面的に信頼し、中東2戦の開催を楽しみにしているという追加声明が発表された。

公式発表や確定的な証拠こそないが、これらの動きを俯瞰すれば、「中東2戦中止、イモラ代替開催」は内部的には決定済みであると考えるのが圧倒的に自然だ。

よって、当サイトでは残りレース数「4」を前提として話を進めることとする。

2. 史上最年少チャンピオンの誕生

これを前提とすると、アントネッリは2位以下に100ポイント以上の差をつければよく、事実上、今回の優勝をもって20歳と61日での史上最年少チャンピオンを獲得したことになる。これはベッテルの23歳134日を大幅に更新するものだ。

前述のサインツのコメント、そして少し前にはフェルスタッペンも中東2戦での開催に慎重なコメントをしていたことからも、おそらくドライバーにはイモラでの代替開催は告げられておらず、F1側とチームのトップマネジメントのみに共有されていると思われる。よって、現時点ではトト・ウォルフとその周辺の人物たちがタイトル獲得を心の中で祝っている状況だろう。

そして優勝で初タイトルを決めたことも印象的だ。歴史上で35人、近代ではセナ、ヒル、ハッキネン、ライコネン、ベッテル、フェルスタッペンがこれを成し遂げた。

●純粋なスピードを武器に勝ち獲った王座

アントネッリについて最も印象的なのは、なんと言っても純粋なスピードだ。以下に今季のここまでの予選およびレースペースをラッセルとの比較の形で示す。

図2-1 予選ペース比較(10勝5敗 平均:0.164秒差)
図2-2 レースペース比較(13勝1引き分け3敗 平均:0.2秒差)

前半戦の予選では差をつけられることもあったが、レースペースでは慎重なアプローチを取らざるを得なかったアゼルバイジャンGP以外は、負けても僅差、勝つ時は大差という、歴代のチャンピオンたちが見せてきた傾向を、まさに見せつけている。

重要なのは、ラッセルが決して遅いドライバーではないことだ。

前任者のハミルトンは、苦戦したメルセデス最終年を除けば、2年ともラッセルに対して、予選で互角、レースペースで0.2秒優勢であった。今年のラッセルが2022, 23年と同じように自身の力を発揮できているとは限らないが、仮にそれを前提とすると、今年のアントネッリはハミルトンとレースペースで互角、予選では0.1秒以上の差で上回る速さを見せたことになり、史上最速クラスということになる。

まだ2年目であり、来年の車でどのように力を発揮するかは未知数であるが、我々はF1の歴史の中でも極めて特別なドライバーの登場を目の当たりにしているのかもしれない。

●レースを完全に支配

図3にアントネッリとフェルスタッペン、ルクレールのレースペースを示す。

図3 アントネッリ、フェルスタッペン、ルクレールのレースペース

序盤はソフトタイヤを履いた2ストップ勢が後ろから攻めてくる展開で、彼らに合わせたハイペースの中である程度のデグラデーションが見られた。しかし13周目にフェルスタッペンが入ってからは、1ストップの本来のあるべきペースに戻し、最初こそ控えめだが、右肩上がりでペースをグングンと上げ、24周目まで引っ張って1ストップを成功させた。実際、アントネッリはミディアムの感触が途中から良くなってきた旨も語っており、タイヤマネジメントは完璧だった。

第1スティントでのラッセルとのペース差は0.8秒もあり、マイアミやシルバーストーンに続いて再び大差がついた。メルセデスのマシンは、最新のアップデートにより、ウィンドウの狭いマシンになったようだが、ラッセル側ではこれを機能させるのに苦労したのかもしれない。だからこそ、今季どのレースでも一貫して高いパフォーマンスを発揮し続けてきているアントネッリには、脱帽である。

3. 次戦の展望

総合力が問われるCOTAでフェラーリが復活し、トップ4チームが非常に接近した中、次戦メキシコは特殊なトラックだ。なんと言っても、高地で気圧が低いことが最大の特徴である。これにより、ダウンフォースが少なく、モナコ並のハイダウンフォースの空力パッケージでも、最高速はモンツァ並、コーナーではダウンフォース不足でツルツル滑るという異様な光景を毎年目にしてきた。今年のマシンは昨年までのグラウンドエフェクトカーのスナッピーさが軽減され、滑りながらコントロールしていけるので、ドライバーにとっても観戦側にとっても楽しいものになるかもしれない。

そしてアントネッリの戴冠については、メキシコで100ポイント以上の差をつけ公式に確定し、それから中東2連戦の中止を発表するのが現実的な路線だろう。メキシコ前に発表してしまえば、チャンピオン獲得の正式な決定の瞬間が、チェッカーフラッグではなくプレスリリースによって齎されることになるからだ。F1としては、これは避けたいだろう。

いずれにせよ、特殊なトラックでどのチームが競争力を発揮してくるのか、ダークホースが現れるのか、非常に楽しみな1週間後になりそうだ。


インタラクティブグラフ

ご自身の視点でさらにデータを深掘りしたい方向けに、操作可能なグラフを用意した。

このツールでは、**「ペースグラフ」と「ギャップグラフ」**の二種類が利用でき、ボタン操作で見たいドライバーだけを自由に選んで表示できる。

特にラップタイムグラフには、レース状況を理解しやすくするための工夫が施されている。

  • 塗りつぶしの点:前が空いている状態(クリアエア)でのラップを示す。
  • 白抜きの点:前のマシンの影響下(ダーティエア:前方2秒以内)にあるラップを示す。

この色分けによって、各ドライバーがどのような状況でそのタイムを記録したのかが一目で把握できる。

また、グラフ右上のボタンからは、画像のダウンロードやグラフの拡大・縮小(ズーム)も可能だ。分析の補助として、ぜひご活用いただきたい。

データを読み込んでいます…

Takumi, ピトゥナ