2026年オランダGPのレースペース分析を行う。
各車の力関係を詳らかにするために必要なことは、生の平均ラップタイムを比較することではない。
各ドライバーが同じ仮想レース条件を走った場合、どの程度の持続可能な平均ペースを発揮できたと考えられるか。
これを、タイヤ年齢、デグラデーション、燃料搭載量、トラフィック、バトル、スティントの長さ、ペース配分、レース終盤のクルージングなどを考慮して推定した。
結論
基準はノリスを0.0秒/周とする。
| Driver | ペース差 | 信頼度 |
|---|---|---|
| Norris | 0.0 | A |
| Leclerc | +0.1 | B+ |
| Hamilton | +0.2 | B+ |
| Antonelli | +0.3 | A- |
| Russell | +0.4 | A- |
| Piastri | +0.6 | B |
| Lawson | +1.0 | B+ |
| Hülkenberg | +1.2 | B+ |
| Alonso | +1.4 | B |
| Gasly | +1.4 | B- |
| Tsunoda | +1.5 | B- |
| Bortoleto | +1.6 | C+ |
| Lindblad | +1.6 | C+ |
| Ocon | +1.6 | C |
| Albon | +1.7 | C |
| Sainz | +2.0 | C |
| Colapinto | +2.2 | C |
| Stroll | +2.5 | C |
| Perez | +2.7 | B- |
| Bottas | +2.9 | C |

比較基準:「C4 18周+C2 24周+C2 24周」
今回の仮想レース条件は、
C4 Soft:18周
C2 Hard:24周
C2 Hard:24周
の計66周とした。
2026年のザントフォールトにはC2、C3、C4が持ち込まれ、それぞれHard、Medium、Softとして使用された。
この条件を選んだ最大の理由は、今回の実戦でHardの長期性能が特に重要だった一方、Softも単なる数周のスプリントタイヤではなく、十分な距離を実戦的に走れるコンパウンドだったためだ。
ノリスは赤旗後にSoftを使用した後、Hardを2セット使用して勝利。レース全体でも雨後の路面状態によってデグラデーションが大きくなり、当初想定されていた1ストップ中心のレースとは全く異なる展開となった。
ただし、比較条件と証拠の重みは分けている。
たとえばローソンにはHardの実走データがない。だからといって架空のHardラップタイムを作るわけではない。良質なMediumとSoftのデータから総合的な競争力を推定する。
反対にハミルトンには非常に価値の高い長いHardスティントがある。その場合はHardを主要証拠とする。
全車を同じ仮想条件で比較するが、そこへ至る計算経路まで全車同一にはしていない。
フューエルエフェクトは0.038秒/周
フューエルエフェクトは、
0.038秒/周
とした。
つまり10周進めば、燃料が軽くなったことだけで約0.38秒のラップタイム改善が期待できる。
異なる時刻のラップを比較するときにはこの影響を除く。
一方、同じ周回の2台を直接比較できるなら、燃料搭載量も路面状態もほぼ同じなので、補正そのものがほとんど必要なくなる。
そのため今回の分析では、回帰モデルによってすべてを一括補正するより、
同一Lap、近いタイヤ年齢、近いトラフィック状況での直接比較
を最も強い証拠とした。
路面コンディションを固定係数では補正しない
今回のザントフォールトでは、「レースが進むほど路面が一定速度で改善する」という前提を置けない。
スタート前の雨によって路面状態が変化し、Pirelliも雨後の滑りやすい路面が摩耗を増やし、土曜日までとは異なるデグラデーションになったと分析している。
したがって、
「1周進むごとに路面が0.01秒速くなる」
といった一律の路面補正は行っていない。
同一周回の直接比較を使える部分はそれを優先し、異なる時間帯をまたぐ場合だけ、燃料補正と周囲の車両のタイム変化を組み合わせた。
ダーティエアは「何秒補正」と決めない
ザントフォールトはもともとオーバーテイクが難しい。レース前のPirelliの分析でも、ピット戦略を考えるうえで追い抜きの難しさが大きな要素になるとされていた。
したがって、前車の1秒以内を走っているからといって、
「本当は0.2秒速かった」
などと一律に補正することはできない。
見るべきなのは、その状態でギャップがどう変化しているかだ。
前車の1秒後方にいながら差を縮め続けているなら、実際には相手以上の競争力を持っている可能性が高い。
逆に数周にわたって0.5秒前後で追い回した末にペースが崩れた場合、その後半部分を通常のタイヤデグとして扱うことはできない。
また、前車に合わせて序盤を抑え、その後クリアエアになって速く走れたケースでは、前半と後半を別々の能力として切り離していない。序盤のタイヤセーブも含めて一つのスティントだからだ。
管理人Takumiのポイント
ノリスはソフトの第1スティントの出来が悪く、ここではアントネッリに0.1秒ほど負けていたが、ハードではラッセルを0.3秒ほど上回り、アントネッリに対しても第2スティントで0.2秒ほど上回っていたと考えられる。逆に、アントネッリは第3スティントのハードで苦しみ、ここではラッセルよりも0.2秒ほど遅かった。そしてラッセルは第1スティントのミディアムでペースが悪く、ハードのピアストリにすらついていけなかった。
このように表彰台3人が全員どこかのスティントで苦戦する中、ソフトでの苦戦が軽く、ハードで傑出した速さを示したノリスに軍配が上がった。
このレースで真のペースを発揮できなかったのがルクレールだ。本来はノリスに迫る力を持ちながら、第1スティントではラッセルに詰まり、第2スティントではピアストリの後方で長い時間を過ごした。しかし第1スティント終盤でクリアエアを得た際のペースはノリスを上回り、第2スティントのミディアムでも、クリアエアを得たスティント中盤ではアントネッリ並みかそれ以上のペースを見せた。55周目のVSC時にソフトに履き替えた中でもルクレールが最速であり、同条件のハミルトンより0.2秒速い。ルクレールにとっては優勝争いが可能なペースがあったものの、レース展開が思うようにいかず、力を結果に繋げきれなかった痛いレースとなった。
また、ピアストリも浮き沈みを経験したドライバーだ。第1スティントのハードは悪くなかったが、第2スティントでは同じコンパウンドでも出来が良くなく、55周目のVSC後のソフトではアントネッリを上回るペースを見せた。彼もまた、今回のオランダGPの一貫性を保つ難しさに悩まされた一人であった。
なお、ストロールについてはダメージの有無がハッキリしないため、現状では保留状態で分析対象に含めてある。後日情報が出てき次第更新予定である。
ChatGPT 5.6 Thinking, Takumi
インタラクティブグラフ
ご自身の視点でさらにデータを深掘りしたい方向けに、操作可能なグラフを用意した。
このツールでは、**「ペースグラフ」と「ギャップグラフ」**の二種類が利用でき、ボタン操作で見たいドライバーだけを自由に選んで表示できる。
特にラップタイムグラフには、レース状況を理解しやすくするための工夫が施されている。
- 塗りつぶしの点:前が空いている状態(クリアエア)でのラップを示す。
- 白抜きの点:前のマシンの影響下(ダーティエア:前方2秒以内)にあるラップを示す。
この色分けによって、各ドライバーがどのような状況でそのタイムを記録したのかが一目で把握できる。
また、グラフ右上のボタンからは、画像のダウンロードやグラフの拡大・縮小(ズーム)も可能だ。分析の補助として、ぜひご活用いただきたい。