結論:推定レースペース順位
2026年モナコGPのレースペースを、ラップタイム、タイヤ、燃料補正、スティント長、トラフィック状況を踏まえて推定した。
基準は Kimi Antonelliを0.0秒/周 とした相対値である。数値は小数第1位までに丸めているため、同じ0.1秒圏内の順位差は厳密に読みすぎない方がいい。
| 順位 | ドライバー | 推定ペース差 | 信頼度 |
|---|---|---|---|
| 1 | Kimi Antonelli | 0.0 | 高 |
| 2 | Charles Leclerc | +0.3 | 高 |
| 3 | George Russell | +0.4 | 中 |
| 4 | Lewis Hamilton | +0.4 | 高 |
| 5 | Oscar Piastri | +1.6 | 中 |
| 6 | Pierre Gasly | +1.7 | 中 |
| 7 | Esteban Ocon | +1.8 | 低 |
| 8 | Liam Lawson | +1.9 | 中 |
| 9 | Gabriel Bortoleto | +2.0 | 中〜低 |
| 10 | Carlos Sainz | +2.1 | 中 |
| 11 | Franco Colapinto | +2.1 | 中 |
| 12 | Sergio Perez | +2.6 | 低 |

参考扱いとしたドライバー
以下のドライバーは、定量値を主表に入れるには根拠が弱すぎるため、別枠とした。
Lando Norris / Nico Hulkenberg / Arvid Lindblad
クリアエア区間が不足している。
Fernando Alonso / Lance Stroll
主な材料がC5ロングスティントであり、今回の基準であるC4/C3条件へきれいに換算できない。
Isack Hadjar / Alexander Albon
車両問題があったため除外した。
Max Verstappen / Oliver Bearman / Valtteri Bottas
Verstappenはラップタイムデータがなく、BearmanとBottasは走行周回が短すぎるため、定量評価から外した。
分析基準
今回の比較基準は、以下のように設定した。
Lap40燃料換算のドライコンディションで、
C4新品30周相当の持続ペースを60%、C3新品25周相当の持続ペースを40%で合成したもの
この基準を採用した理由は、2026年モナコGPの有効なレースペース区間が主にLap2〜57に集中していたためである。
Lap58以降は中断、極端な異常ラップ、再開手順、終盤スプリントの影響が大きく、通常のレースペースとして扱いにくい。終盤のC5は参考にはなるが、持続可能なロングラン能力を測る主材料にはしなかった。
また、このレースではC4で長く走ったドライバーが多く、C3は第2スティントの比較材料として有効だった。したがって、C4を主軸、C3を補助軸とする基準が最も自然である。
フューエルエフェクトは 0.026秒/周 とし、各ラップをLap40相当に補正した。
補正タイム = 実ラップタイム + 0.026 × (Lap – 40)
これにより、序盤の重い燃料状態と終盤の軽い燃料状態を同じ土俵に近づけた。
除外・減点したラップ
今回の分析では、以下のラップを除外、または大きく重みを下げた。
- Lap1
- インラップ、アウトラップ
- ピット作業や中断の影響を含むラップ
- Lap58以降の混乱区間
- 明らかなミス、譲り、周回遅れ処理による大きなロス
- 前車に抑えられていたモナコ特有の隊列ラップ
- Williams勢の意図的なスロー走行区間
- 車両問題が報告されたドライバーのデータ
特に重要なのは、モナコでは「前の車につっかえて遅いラップを刻んでいること」が、そのままその車の実力を意味しない点である。モナコでは、前車が3秒遅いペースで走っていても後続は抜けない。したがって、前車に抑えられているラップをそのまま平均に入れると、後続車を不当に低く評価してしまう。
Russellの第1スティント、NorrisのGasly後方での走行、Williams勢の隊列操作区間は、この典型例である。
Antonelli:明確な最速基準
Antonelliは今回の分析で最も基準にしやすいドライバーだった。
C4でもC3でもペースが安定しており、前後の影響も比較的小さい。燃料補正後の有効ラップは1分16秒台前半から中盤にまとまっており、スティント形状も自然だった。
そのため、Antonelliを0.0秒/周の基準とした。
Leclerc / Russell / Hamilton:第2グループ
Leclerc、Russell、HamiltonはAntonelliの後方に続く第2グループである。
Leclercは非常に読みやすい。C4、C3ともにAntonelli比でおおむね+0.3秒/周前後に収まり、レースを通じて安定していた。
HamiltonもC4ではかなり良く、Leclercに近い水準だった。C3ではやや落ちるが、総合ではAntonelli比+0.4秒/周程度と見てよい。
Russellは注意が必要だった。第1スティントではHadjarの後方に抑えられていたが、これはRussellの本来のペースではない。モナコでは、前車が遅ければ後車もそのペースに付き合わされる。
したがって、Russellの評価では第1スティントの遅さをほぼ除外し、ピット後のC3スティントを重視した。C3に替えた後は1分16秒台中盤から後半のラップを複数回記録しており、Leclerc / Hamiltonと同じグループに置くのが妥当である。
PiastriとGasly:差は大きくない
Piastriは一見すると、C3スティントの短い区間でかなり良く見える。しかし、その短い攻撃的なスティントを長い基準スティントへそのまま外挿してはいけない。
レース全体のギャップ推移を見ると、PiastriはLap5時点でAntonelliから約15.7秒差、Lap58時点で約103.6秒差だった。差分は約88秒であり、約53周で割るとAntonelli比で約+1.7秒/周となる。
これはピットを含む粗い見方ではあるが、レース全体の力関係を見る上では非常に強いアンカーになる。
GaslyもPiastriと大きく離れていたわけではない。序盤に少し差が開いた後、両者のギャップは長い時間かなり似た形で推移していた。したがって、Piastriを+1.6秒/周、Gaslyを+1.7秒/周と評価した。
PiastriをGaslyより少し上に置く余地はある。ただし、両者を別グループと見るほどの差はない。
Lawson:中団の比較的きれいな基準
Lawsonは中団の中では比較的評価しやすい。
C4の序盤から中盤、さらに後半の有効ラップを合わせると、Antonelli比でおおむね+1.8〜2.0秒/周の範囲に収まる。Piastri / Gaslyよりは一段落ちるが、下位集団よりは安定していた。
推定値は+1.9秒/周、信頼度は中とした。
Ocon:数値は出せるが、解釈には注意
Oconは早めにC3へ交換したため、他の中団勢とはタイヤ戦略が大きく異なる。評価対象にできるのは、アウトラップ後のLap11〜30付近である。ただしLap26は明らかな異常値として除外し、Hulkenbergに近づきすぎたLap31以降も評価対象から外した。
そのためOconは、Lap11〜30までを評価対象とし、C3単体では中団上位寄りの内容だったが、C4での比較材料がないこと、早期ピットによるタイヤ条件差が大きいことから、Antonelli比で+1.8秒/周、信頼度は低とした。
Bortoleto:Hulkenbergよりは材料がある
BortoletoはHulkenbergと似たような早期ピット組に見えるが、評価材料の質は違う。
HulkenbergはC3序盤に良いラップがあるものの、クリアエアが短い。一方、BortoletoにはLap18〜34付近に比較的有効なクリアエア区間がある。特にLap18〜31あたりは、前車とのギャップもある程度あり、本人のペースを切り出す材料として使いやすい。
この区間の燃料補正後ペースは、見た目にはかなり良い。ただし、新品寄りC3の短めの区間であること、そして今回の基準がC4 30周相当とC3 25周相当の合成であることを考えると、そのまま評価するのは危険である。
短期の良いラップを持続ペースへ補正し、全体基準へ寄せると、BortoletoはAntonelli比で約+2.0秒/周と見るのが自然である。
SainzとColapinto:ほぼ同じペース帯
Sainzは、Williamsのチーム戦術を切り分けることが重要だった。
Williamsは、一方のドライバーが意図的にペースを落として後続を抑え、チームメイトにピットストップのためのスペースを作る戦術を使っていた。その後、役割を入れ替えて同じことを行っている。
そのため、SainzやAlbonの81秒台、82秒台のラップをそのまま実力として扱うのは誤りである。
Sainzについては、第1スティント前半のLeclercとの比較が最も有効である。Lap5〜29付近では、Leclercが安定して1分17秒前後、Sainzが1分18秒台後半から1分19秒前後で推移している。この区間では、SainzはLeclerc比で約+1.8〜1.9秒/周だった。
LeclercをAntonelli比+0.3秒/周と見れば、SainzはAntonelli比で+2.1秒/周前後になる。
Colapintoも同じく評価しやすい。第1スティントではSainzの後方にいたが、基本的にはよく付いていけており、Sainzとの差は大きくなかった。Lap5〜34付近を見ると、ColapintoとSainzの差はほぼゼロに近い。
したがって、ColapintoもSainzと同じ+2.1秒/周と評価した。
Perez
PerezはC4ロングの有効区間で明確に苦しく、Antonelli比では+2.5秒/周以上の領域に見える。トラフィックの影響もあるため信頼度は低いが、少なくとも中団上位のペースではなかったと考えられる。
このレースの分析で最も重要なこと
2026年モナコGPは、ラップタイム表を単純に平均しても答えが出ないレースだった。
最大の理由はモナコのコース特性である。前車に抑えられている後続車は、本来のペースを発揮できない。したがって、Russellの第1スティントを遅いと評価したり、NorrisをGaslyのペースに縛られたまま評価したりすると、結論を誤る。
もう一つ重要なのは、短いスティントの扱いである。PiastriのC3短期スティント、OconやBortoletoの新品寄りC3区間は、見た目には速い。しかし、短い攻撃的な区間を30周前後の持続ペースへそのまま持ち込むことはできない。スティント長に応じて、どの程度その速さを持続可能だったかを推定する必要がある。
さらに、Williamsのような意図的なスロー走行もある。これは通常のデグラデーションでも、ドライバーの遅さでもない。モナコ特有のチーム戦術として作られた遅いラップであり、ペース評価からは切り離すべきである。
総括
2026年モナコGPのレースペースは、Antonelliが明確に最速だった。
その後方にLeclerc、Russell、Hamiltonが続く。Russellは第1スティントでHadjarに抑えられたため生タイムでは見えにくいが、C3スティントの内容から見れば第2グループに入る。
PiastriとGaslyはほぼ同じペース帯だった。Piastriの短いC3スティントだけを見ると速く見えるが、レース全体のギャップ推移からはAntonelli比で約+1.6秒/周の領域に落ち着く。
Lawsonがその後ろに続き、Ocon、Bortoleto、Sainz、Colapinto、Lindbladが中団後方の近い帯に並ぶ。SainzとColapintoは、特に第1スティントの直接比較からほぼ同水準と見てよい。
一方で、Norris、Hulkenberg、Alonso、Strollは主表から外した。NorrisとHulkenbergはクリアエア不足、AlonsoとStrollはC5ロングからの基準換算が難しいためである。
このレースの勢力図は、単純なラップタイム平均ではなく、モナコ特有の隊列、タイヤ戦略、燃料、スティント長、チーム戦術を切り分けて初めて見えてくる。最終的には、以下の構図が最も自然である。
Antonelliが最速。
Leclerc、Russell、Hamiltonが第2グループ。
PiastriとGaslyがその次。
Lawson以降は中団後方で、SainzとColapintoはほぼ同等。
これが、2026年モナコGPのレースペースの全体像である。
インタラクティブグラフ
ご自身の視点でさらにデータを深掘りしたい方向けに、操作可能なグラフを用意した。
このツールでは、**「ペースグラフ」と「ギャップグラフ」**の二種類が利用でき、ボタン操作で見たいドライバーだけを自由に選んで表示できる。
特にラップタイムグラフには、レース状況を理解しやすくするための工夫が施されている。
- 塗りつぶしの点:前が空いている状態(クリアエア)でのラップを示す。
- 白抜きの点:前のマシンの影響下(ダーティエア:前方2秒以内)にあるラップを示す。
この色分けによって、各ドライバーがどのような状況でそのタイムを記録したのかが一目で把握できる。
また、グラフ右上のボタンからは、画像のダウンロードやグラフの拡大・縮小(ズーム)も可能だ。分析の補助として、ぜひご活用いただきたい。
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